研究概要 |
嚢胞性病変におけるマトリックスメタロプロテアーゼ1,8(MMP-1,8)とそのインヒビター(TIMP-1)の発現について免疫組織化学的に検討を行っている.材料は奥羽大学歯学部附属病院を訪れた患者より得た.異なった状況下での発現様相を検討するために,炎症性の嚢胞として歯根嚢胞を,非炎症性(発育性)の嚢胞として歯原性角化嚢胞を検索対象とした.前者はさらに炎症反応の著明な炎症型と炎症反応が沈静化した遷延型に細分した.[結果] 炎症型歯根嚢胞ではMMP-1,TIMP-1ともに上皮組織,肉芽組織,外層の線維性結合組織のいずれにおいても強い発現が見られた.陽性細胞は重ねて行った免疫組織化学によりマクロファージ,血管内皮細胞,線維芽細胞であることが明らかにされた.遷延型歯根嚢胞では,線維性組織でのMMP-1陽性細胞の現象が見られた.歯原性角化嚢胞では,上皮のみがMMP-1陽性を示した.なお,MMP-8は炎症型歯根嚢胞において好中球にのみ発現が認められた・これらの結果は、第44回日本口腔外科学会総会,第28回奥羽大学歯学会にて報告した.以上の免疫組織化学と平行して,現在MMP-1,TIMP-1のin situ hybridizationのためのプローブ作製を試みている.全RNAからの調製が順調に進んでいないところから,オリゴヌクレオチドを用いた方法の検討を行っている.加えて,これら酵素の分泌に重要な役割を有すると考えられているサイトカインIL-1,TNF-αの発現についても免疫組織化学的およびin situ hybridizationによる検討を計画している・
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