研究概要 |
歯根嚢胞と歯原性角化嚢胞の嚢胞壁におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-1およびMMP-8とこれらの阻害因子であるTIMP-1の発現状況について免疫組織化学的に検討した.歯根嚢胞は,壁で著しい炎症反応の見られる炎症型と,炎症反応が消退し線維化が目立つ遷延型に分けた.免疫組織化学的に,歯根嚢胞,歯原性角化嚢胞ともにマクロファージ,血管内皮細胞,線維芽細胞,裏装上皮細胞がMMP-1お上びTIMP-1を発現していたが,MMP-8の発現は認められなかった.これらの陽性細胞はそれぞれのマーカー抗体によって免疫組織化学的に同定された.歯根嚢胞において,嚢胞壁結合組織でのMMP-1の陽性細胞率はTIMP-1の陽性細胞率より有意に高かったが,このことは遷延型より炎症型においてより顕著であった.裏装上皮では両型ともに全構成細胞が陽性を示し,差は認められなかった.歯原性角化嚢胞では,裏装上皮においてMMP-1がTIMP-1より高い陽性細胞率を示したが,結合組織では差は認められなかった.以上の結果から,MMP-1とTIMP-1の活性のバランスの破綻が嚢胞増大に関連する組織破壊に関与していることが示唆されたが,この変化は,歯根嚢胞においては結合組織において,歯原性角化嚢胞では裏装上皮で展開されていた.このことから歯根嚢胞と歯原性角化嚢胞はそれぞれ異なったメカニズムで増大する可能性がある.in situ hybridizationによるMMP-1およびTIMP-1遺伝子の発現については現在検索中である.
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