研究概要 |
本研究では齲蝕細菌のデキストラナーゼ遺伝子(dex gene)の解析を行う目的で研究を進め、次の結果を得た。まず初めに、齲蝕細菌であるStreptococcus downeiとStreptococcus rattusのdex geneの全塩基配列を決定した。S.downeiのdex geneの読み枠は3,831bpで、分子量139,743(1,297アミノ酸残基)のデキストラナーゼ(Dex)をコードしていた。一方、S.rattusのdex遺伝子の読み枠は2,760bpで、分子量97,596(897アミノ酸残基)のDexをコードしていた。この2菌種と既報のS.mutansおよびS.sobrinusのDexアミノ酸配列の比較解析から、齲蝕細菌のDexは保存領域(分子中央に位置し、約540アミノ酸残基から成る)とその両端の可変領域から成ることを明らかにした。 次に、この保存領域がDexの機能に重要であると考え、Dexの機能解析を進めた。その結果、保存領域のほぼ中央に齲蝕細菌のglucosyltransferaseの活性部位と相同性の高い配列(S.mutans Dexでは379-FDGWQGDTIGDN-390)を見いだした。そこでS.mutans dexの部位特異的変異によりこの配列内のアミノ酸を置換し、Dex活性への影響を調べたところ、385番目のAsp(D)残基の置換により活性が消失した。また、抗S.mutans Dex抗体を用いたウエスタンブロットにより、この活性消失変異体は基質(デキストラン)結合能を保持していることがわかった。 以上の結果より、S.mutans DexのAsp-385残基(活性中心)は酵素活性に重要であり、その他の齲蝕細菌にもまたこれに類似したAsp残基が存在することが明らかになった。さらに、Dexの基質結合部位は活性中心(Asp-385)とは別に存在することが明らかになった。
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