研究概要 |
1.歯肉繊維芽細胞を酪酸と共に培養し上清中のサイトカイン(IL-1α,Il-1β,IL-6,IL-8,IL-11,TNFα及びTGFβ)産生量を測定したところ、酪酸刺激により細胞上清中に産生されるサイトカインはIL-6,IL-8及びIL-11が顕著であり、その産生量はIL-6:約1500〜1900pg/ml,IL-8:約4000〜5000pg/ml及びIL-11:約900〜1100pg/mlと未刺激に比較して約3.8-4.9倍(IL-6),約50-58倍(IL-8)及び約11.3-28.8倍(IL-11)増加した。 2.供試濃度のIL-6及びIL-8添加はJurkat T細胞アポトーシスを僅かに促進したが、一方IL-11添加においてはアポトーシスの著しい抑制が認められた。このことから酪酸刺激により繊維芽細胞培養上清中に産生される炎症性サイトカインの各々の効果の総和が、歯肉繊維芽細胞によるT細胞アポトーシスの減衰に影響を与えていることが示唆された。 3.酪酸存在下における繊維芽細胞付着JurkatT細胞数の変化を共焦点レーザー顕微鏡にて測定したところ、酪酸添加により繊維芽細胞に付着するT細胞数は著しく増加し、更に付着T細胞のアポトーシスは完全に抑制されていた。酪酸添加により繊維芽細胞表層上のCD47,CD44及びCD58分子の増加が認められたことから、これらの分子マーカーが酪酸誘導T細胞アポトーシスの抑制に関与していることが示唆された。 以上の結果から、T細胞アポトーシスにおける歯肉繊維芽細胞共培養の影響は、繊維芽細胞が産生する炎症性サイトカイン等の液性因子又は細胞表層上の分子マーカーによってT細胞アポトーシスが抑制されることが示唆された。
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