生体防御反応の中で、T細胞の果たす役割は極めて大きい。T細胞は獲得性免疫機構の調節因子として働いている。T細胞の機能の喪失はすなわち獲得性免疫の欠如につながる。免疫不全マウス(aly-/-)は、血中にIgG及びIgAを認めず、IgMも少量しか産生がみられない。かつ抗体産生反応の場である抹消リンパ説を欠損しているユニークばマウスである。本研究の結果、aly-/-マウスのこれらの病態の一因として、IL-2およびINγが見られないことを見い出した。この欠損は、RT-PCR法で、mRNAの産生を検出できなかったことから、mRNA合成レベルかシグナル伝系の異常が示唆された。このマウスにおいてT細胞およびB細胞の量的異常は認められず、正常マウスT細胞との混合培養により、IgG産生が一部回復することから、病態としてはT細胞の機能に異常があると考えられた。IL-2およびINγはTh1タイプのサイトインであることから、口腔粘膜に遅延型過敏症のモデルで、aly-/-マウスの病変を観察したところ、正常マウスに比べ、病変は極めて軽微なものしか認められなかった。このことから、口腔粘膜遅延型過敏症のマウスモデルにおいて、Th1細胞性サイトカインであるIL2およびINγが病変の重症度と強い相関があることを明らかにした。ヒトの口腔粘膜の難治性の扁平帯渦癬では同様にTh1細胞が有為であることから、病変の成立過程を検索するに有為であると考えられた。 また、aly-/-マウスの各臓器の組織学的観察を行ったところ、唾液腺、肺、膵臓、肝臓などにおいて、リンパ球性の病巣を見い出し、エイジングにより周囲組織を破壊して病巣が拡大していくことを確認した。このような臓器特異的な変化は、自己免疫異常で良く見られることから、集簇するリンパ球の解析を行い、Tny1腸性、CD4およびCD8は陰性のリンパ球性病変で、極めてわずかにIgM産生細胞を含むことを明らかにした。現在、この病変の解析を継続している。
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