研究概要 |
マウス(ICR strain)顎下腺の顆粒性導管(GCT)細胞には種々の生理活性ペプチドと4種の組織カリクレインファミリー(mK1,mK9,mK13,mK23)が局在し、内分泌ホルモンによって調節をうけている。真性組織カリクレインmK1は他の物質とホルモンに対する挙動を異にするが、ファミリーの各酵素との相同性が高いため免疫組織学的にこの酵素の局在を同定することは困難であった。そこで、我々は抗mK1抗体を他3種のカリクレインファミリーで吸収することにより、mK1特異抗体を作成(Kurabuchi et al,1999)し、次の結果を得た。 真性組織カリクレインmK1は雌雄(成体)ともに一部のGCT細胞でのみ発現し、陽性細胞数は雄(全GCT細胞の1割程度)より雌(およそ半数)のほうが著しく多く、性的二型を示した。また、去勢雄では、mK1陽性細胞は数を増し、正常雌と類似した様相を呈した。両者ともアンドロゲン投与によってmK1陽性細胞数は減少した。つまり、GCT細胞におけるmK1の産生阻害はアンドロゲンが一因であり、その結果、性的二型が表れることを示している。 次に、真性組織カリクレイン遺伝子mK1k-1の局在を検討するためにprimer-up(ACC ATC ACA GAT CAG TGG G)、および-down(CCT CCT GAA TGA GCA CAC CC)をデザインした。マウス顎下腺、舌下腺、腎臓、肝臓から全mRNAを調製した後、逆転写酵素によりcDNAを得た。これを鋳型としてprimerに相当するDNAを遺伝子増幅装置で増幅した(RT-PCR法)。PCR産物をアガロースゲル電気泳動法で調べた結果、顎下腺、舌下腺、腎臓で同じ位置に一本のbandを確認した。現在、このプローブを用いてin situ hybridization、およびin situ RT-PCRを検討している。
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