若年性歯周炎原因菌のActinobacillus actinomycetemcomitansは白血球走化性を阻害する因子を産生していることが1991年に報告されたが、それ以降この因子に関してはいっさい報告がない。本研究では3年間のプロジェクトの初年度として、まずその因子の性質について詳しく検討したところ、酸処理(約pH2)や熱処理(90℃5分)によってラットCINC(cytokine-induced neutrophil chemoattractant)-1依存のラット好中球走化性反応を阻害する活性は失われなかった。またこの活性はプロテアーゼ処理によって完全に失活した。これらの結果より本因子は熱や酸に対して安定なタンパク性の物質であることが分かった。さらに本因子の精製を、従来の複数の方法によって試みたが、初期の段階で失活してしまうために、現在のところ成功していない。今後引き続き精製を試みる予定である。一方、前述の酸や熱に安定であるという性質から推定すると、複雑な高次構造をとってはおらず、またあまり分子量の大きくないタンパク(ペプチド)であることが考えられた。そこで本菌の染色体より遺伝子ライブラリーを作製し、形質転換して得られた大腸菌の超音波破砕上清の阻害活性をスクリーニングした。合計200個についてボイデン法によってCINC-1によって惹起されたラット好中球走化性反応に与える影響を検討したところ、現在まだ阻害活性を示すリコンビナントは得られていない。さらに引き続きスクリーニングを続行中である。
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