若年性歯周炎の原因菌であるActinobacillus actinomycetemcomitansは白血球走化性を阻害する因子を産生していることが1991年に報告されたが、それ以降この因子に関してはいっさい報告が無い。本研究において、初年度にはその因子の性質について検討し、その結果熱や酸に安定なタンパク性の物質であることが分かった。今年はさらにその性質を詳細に検討したところ、キモトリプシン耐性であるがトリプシンやプロティナーゼKには感受性であった。またメタノールやエタノール等の有機溶媒やアルカリに対しても失活しなかった。これらの性質を考慮し昨年度に引き続き精製を試みた。上記の性質から比較的分子量の小さいしかも単量体のタンパクであることが予想された。そこでHPLCを使った逆相カラム(C18)で精製を試みたが成功しなかった。さらにHPLCによるハイドロキシアパタイトカラム及び陰イオンカラムクロマトグラフ(いずれも順相)を含めた種々の方法を実施中である。また、昨年度から行っているプロジェクトも引き続き検討している。すなわち本菌の染色体より遺伝子ライブラリを作製し、形質転換して得られた大腸菌より超音波破砕上清の活性を調べてスクリーニングした。昨年と合わせて300個について、ボイデン法によってCINC-1依存のラット好中球走化性に与える阻害活性について検討したところ、現在のところまだ目的のリコンビナントは得られていない。さらに引き続きスクリーニング中である。
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