研究概要 |
歯髄は歯牙の中心部をしめる軟組織である。その形成期すなわち歯乳頭の時期から象牙質形成が起こり若い歯髄になるまでに、神経・血管網の構築を含む大規模な変化が生じる。歯髄が形成された後も、加齢と共に象牙質のさらなる添加により,歯髄容積が減少することが知られている。ラットの切歯のような無根歯では根端部での細胞増殖が歯髄細胞の供給に必須であり、切端部での咬耗による硬組織の消失を補償している。歯髄における細胞の分裂頻度と多数の分裂像の見られる領域についても報告がある。一方、種々の器官形成時には、細胞増殖ばかりでなく、アポトーシスが重要な役割を果たしていることが、近年明らかとなってきた。幼若な歯胚でも例外ではなく、エナメル器や歯嚢にアポトーシスが見られると報告されている。またエナメル芽細胞でもその移行期に選択的にアポトーシスが生じ、周囲の上皮細胞、またはMHC classIIを発現するマクロファージ様または樹状細胞によって貧食処理されることが代表者らの研究によって明らかになってきた。本研究では歯髄のアポトーシスがどの程度起きているのかをラット切歯を材料として用い検討した。この結果歯髄中にはTUNEL陽性像が多数認められ、これを補助金により購入した顕微鏡用デジタルカメラにより撮像し、画像解析した。この結果歯牙の萌出方向へその数が増していることが明らかとなった。さらにアポトーシス細胞断片の貧食に関わる樹状細胞とマクロファージを申請の抗体を用いて検出し、デジタルカメラで撮像すると、アポトーシス頻度と同様、萌出方向へ増加していることが明らかとなった。従って少なくともラット切歯歯髄では、減少する歯髄腔を補償するためにアポトーシスが生じていることが考えられた。
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