本研究は歯髄のアポトーシスとこれに関わる免疫担当細泡について研究を行った。ラットの切歯は動物が生きている間、萌出を続けるいわゆる無根歯のため、歯髄の成熟過程をひとつの歯牙を用いて検索ができる材料である。TUNEL法を用いて歯髄内のアポトーシス頻度を測定したところ、萌出端に近いところ、すなわち歯髄腔が狭窄したところで多数観察された。したがって、スペースの減少による細胞数の調節にアポトーシスが働いていると考えられた。さらにアポトーシスを起こした細胞断片の処理過程を知る目的で、マクロファージおよび樹状細胞を検討した。マクロファージマーカーであるED2、マクロファージおよび樹状細胞マーカーであるED1、MHC classIIマーカーであるOX6、およびシステインプロテアーゼインヒビターであるシスタチンCに対する抗体を用いた。シスタチンCは抗原分子とMHC classIIを限定分解するカテプシンSの阻害をしていることがわかっている。その結果、シスタチンCは未成熟な樹状細胞に強く発現し、成熟した樹状細泡では、シスタチンCの発現量は減少することになる。従って、シスタチンCの免疫組織化学により、樹状細胞の局在を調べることにより、その成熟度を知ることができる。歯髄中でシスタチンCの局在を調べると、MHC classII陽性細胞は、同時に、シスタチンC強陽性のものからほとんど反応の見られないものまで様々であった。また歯髄中にはED2強陽性のマクロファージも多数見られ、マクロファージもシスタチンC陽性であることが知られている。本研究ではこれらの免疫組織化学と補助金により購入した顕微鏡用デジタルカメラを用い撮像し、画像解析した。この結果歯髄中に見られる樹状細胞には種々の成熟段階のものが存在し、これらはアポトーシスによって生じた細胞断片の貪食と処理過程に関わっていると考えられた。
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