研究概要 |
本研究は,慢性に経過する梅毒の原因菌で、らせん状のグラム陰性菌であるTreponemapallidumと同じ菌属で,歯周病巣の炎症の進行とともにその比率が増加することが知られている口腔スピロヘータの一つであるTreponeme mediumのリポ多糖体(LPS)およびその活性中心であると考えられるリピドA画分を抽出・精製し,その構造ならびに生体毒性について明らかにし,また,これまでに知られているグラム陰性細菌由来のLPS/リピドAとの構造・活性相関について比較検討しようとするものである.本年度は以下の結果が得られた.1)T.mediumを嫌気的条件下で大量培養した後,菌体を遠心操作にて集め,その凍結乾燥菌体から温フェノール・水法によりLPSを抽出後,酵素処理および超遠心操作を繰り返し精製した.現在,同精製LPSを酢酸で加熱処理後,クロロホルム/メタノール/水/トリエチルアミン混合液を加え分配を実施し,リピドA画分を得ることを試みている.大腸菌や歯周病原性細菌の一つであるPorphyromonas gingialis由来のリピドAとは,薄層クロマト上で異なったRf値をとるようである.2)得られたT.mediumLPSの内毒素作用について検討した.すなわち,マウスを用いた致死活性およびリムルステストをによる結果から,大腸菌由来の強毒性LPSやP.gingivalis由来の弱毒性LPSよりも,さらに弱い内毒素活性を示した.また,ヒト歯肉上皮細胞からの炎症性サイトカインの産生誘導活性も非常に弱いものであった.次年度には,T.medium由来のリピドA画分を調製し,その構造を解析し,また,その生物活性を検討することを計画している.
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