研究概要 |
平成11年度は,T.mediumを大量培養し,同凍結乾燥菌体から温フェノール/水で抽出したリポ多糖体LPS画分について,その内毒素作用や生物学的活性について検討した.その結果,内帑素作用ならびにサイトカイン産生誘導活性やマイトジェン活性などは非常に弱いことが明らかとなった.本年度は,T.medium LPS画分からリピドA分子の抽出を試みたところ,Escherichia coli由来LPSにみられるようなリピドA画分の存在はみられなかった.したがって,T.medium LPS画分において,従来から知られているLPS分子は含まれないあるいはごく微量しか含まれないものと考えられる,これらの結果は,上述した前年度のT.medium LPS画分の免疫生物学的活性の結果を裏づけるものと思われる.そこで,水溶性成分にLPSの存在がみられなかったために,極性有機溶媒におけるリピドA様化合物の検出を試みた.その結果,クロロホルム・メタノール系抽出物ならびにエタノール抽出物において糖脂質を^1H-NMRにより検出することができた.現在,これら糖脂質を分画し,その化学構造を調べ,また,その生物活性について検討を進めている.本研究計画を立案したこととは予想に反して,これまでのグラム陰性菌のLPS/リピドAとは異なり,口腔トレポネーマであるT.medium由来の糖脂質画分は,その化学構造や生物学的諸性状が違うようであることが示唆された.今後,歯周病における口腔スピロヘータの役割について検討するために,本研究で得られた糖脂質画分の生体に対する病原性について引き続き検討してくことを考えている.これら菌体表層成分に関する研究が,スピロヘータによる慢性疾患の発症機構の解明や同感染症の制御につながればと期待している.
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