研究概要 |
本研究は,歯周病巣の炎症の進行とともにその比率が増加することが古くから知られている口腔トレポネーマの一つであるTeponema mediumからLPSを抽出し,内毒素作用や免疫分子生物学的作用について各々調べた.また,T.medium LPSからリピドA画分の抽出ならびにリピドA様糖脂質の分離精製を試みた.その結果,以下のような知見を得た. 1)T.mediumを温フェノール/水で抽出後,凍結乾燥して得たLPS画分は,致死活性やリムルス試験などの内毒素活性は弱かった.ヒト末梢血単球締胞に対して弱いinterleukin(IL)-6誘導活性を示した.しかしながら,Vogelらの方法により再精製したLPS(Rp-LPS)には同活性はみられなかった.また,樹立したヒト歯肉上皮細胞からのIL-8産生誘導活性についてもみられなかった.2)T.medium LPS画分ならびにRp-LPSによるLPS応答性C3H/HeNならびにLPS非応答性C3H/HeJマウスの脾細胞に対するマイトジェン作用はみられなかった.3)LPS画分からリピドA分子の抽出を試みたところ,Escherichia coli由来LPSにみられるようなリピドA画分は存在しなかった.4)水溶性成分にLPSの存在がみられなかったために,極性有機溶媒におけるリピドA様化合物の検出を試みた.その結果,クロロホルム・メタノール系抽出物ならびにエタノール抽出物において糖脂質を^1H-NMRにより検出した.現在,これら糖脂質画分の化学構造やその生物活性について検討を進めている. 今後,歯周病における口腔スピロヘータの役割について検討するため,糖脂質の慢性炎症との関係を明らかにしていくとともにグラム陰性菌による慢性疾患の発症機構の解明や同感染症の制御にについて検討していきたい.
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