ヒトの口腔では、歯胚の細胞の異常な増殖によって腫瘍や嚢胞などの歯原性病変が発生するが、それらの病変の発生機序についてはまだ分らないことが多い。ヒトの口腔における歯原性病変の発生機序を解明するために、今までに、動物の歯胚を用いた実験的研究がなされている。本研究では、ヒトの口腔における歯原性病変の成り立ちを明らかにする目的で、器官培養を行ったマウスの歯胚におよぼす細胞増殖因子のEGFとIGF-Iの影響を組織学的ならびに免疫組織化学的(BrdU法)に検索した。実験は次の4群に分けて行った。A群(BGJb:6日群)、B群(EGF(100ng/ml):6日群)、C群(IGF-I(50ng/ml):6日群)、D群(EGF(100ng/ml)+IGF-I(50ng/ml):6日群)。上記の4群を病理組織学的および免疫組織学的(BrdU法)に検索した。本研究の結果、A群(BGJb:6日群)と比較して、B群(EGF(100ng/ml):6日群)とD群(EGF(100ng/ml)+IGF-I(50ng/ml):6日群)では、歯胚の上皮細胞の増殖が認められた。しかしながら、A群(BGJb:6日群)と比較してC群(IGF-I(50ng/ml):6日群)では、ほぼ同様の結果が得られた。本研究の結果から、細胞増殖因子のEGFは器官培養を行ったマウスの歯胚において上皮細胞の増殖を促進することが推測された。また、IGF-Iは歯胚の上皮細胞の増殖にあまり影響をおよぼさないことが推測された。
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