低張の最終唾液産生に関与することが知られている唾液腺主導管には幾つかの機能が分かっていない細胞が存在している。その一つにtuft cellがある。数年に渡る研究により分泌細胞ではないかという考えに至り、tuft cellの分泌能を証明するためにRI物質を投与し、代謝される過程をオートラジオグラフィー法により検討した。昨年度の研究によりtuft cellの小胞はレクチンのSBAに反応することが分かったので、SBAの結合糖であるGal(galactose)をトリチウムでラベルしたものを投与し光顕オートラジオグラフィー法により検討した。tuft cellに反応が少なかったので、今年度はSBAの別の結合糖であるGalNAc(N-acetylgalactosamine)を投与する予定であったが、市販されていず、作成を依頼したが、現在のところ作成が困難ということであった。3H-galactose取り込み実験を電顕オートラジオグラフィー法により詳細に検討した。 【結果】 ラット7週齢(体重220g)を3匹使用した。3.3mCiの3H-galactoseを腹腔内に投与後、経時的(5分、10分、40分)に主導管を切り出した。グリッドに切片をのせ、乳剤をかけ14週間冷凍庫にて露出を行った。露出終了後脱ゼラチンを兼ねて、二重染色を行い検鏡した。5分後:主導管上皮直下の毛細血管内に現像銀粒子が観察された。10分後:上皮直下の毛細血管内と一部の明調細胞のゴルジ装置や管腔直下の小胞近辺に現像銀粒子が観察された。40分後:明調細胞I型とII型の基底陥入部分、ゴルジ装置近辺、管腔直下の小胞近辺、管腔内にも観察された。tuft cellではゴルジ装置近辺、グリコーゲン領域等に現像銀粒子が観察された。 【結論】分泌能を証明するには細胞から現像銀粒子が消失することが必要で40分以上経過した試料が必要である。
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