本年度ではBMPとnogginの相互作用が骨、軟骨の発生、分化課程のどの時点で行われているかを検討するために、主としてin vitroでの培養による実験を行った。まず細胞株を用いた実験はテラトカルシノーマ由来間葉系細胞C1を用いた。C1細胞は、培養条件を変えることで、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞にそれぞれ分化することができる。培養細胞の実験では、軟骨細胞に分化させたときにのみnogginの発現が誘導され、骨芽細胞への分化条件では全く誘導がかからなかった。しかもnogginの誘導は軟骨基質を産出する分化後期において誘導が観察された。次にnogginの発現調節を行う具体的な分子は何であるか調べるために、分泌タンパクのスクリーニングを行った所、BMP4/7のヘテロダイマーが濃度依存的にnogginの発現を上昇させた。調べた濃度では5ng/mlの濃度から発現の促進が認められ、100ng/mlが最大の効果を示した。またBMP7ホモダイマーでも100ng/mlでnoggin遺伝子発現の促進がおこったが、同じ濃度のBMP2では遺伝子発現の促進は認められなかった。またnoggin遺伝子発現の促進に対するBMP4/7の効果は時間依存性も示し、作用後24時間で最大の効果を示した。 これらの細胞株を用いた実験から結果からnogginの発現はBMPの制御下にある可能性が示されたため、マウス胎児の骨格形成期におけるBMPとnogginの発現部位を解析したnogginはin vitroの結果と同様マウス胚肢芽発生においても、軟骨の前駆体細胞凝集からその発現が始まり、肥大軟骨に至るまで発現が持続し、石灰化が始まると発現は消失した。さらに、nogginとBMPとくにBMP7の発現領域と密接な関係があることが判明した。これらin vtroの細胞培養の結果ならびにin vivoの骨格形成の結果から、nogginの発現は軟骨分化を行う細胞において分化にともなって発現し、その遺伝子発現はBMPの制御下にある可能性が示された。
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