本研究は軟骨細胞の増殖と分化の制御において、転写因子cbfa1がどのように関与しているかを明らかにすることを目的として行われた。本研究により得られた知見を列記する。 1)cbfa1は成長軟骨の肥大層、特に、骨髄細胞、血球系細胞が侵入し、骨へ置換される近傍において強く発現していた。 2)培養軟骨細胞にcbfa1を強制発現させると、細胞の肥大化・石灰化が強力に促進された。 3)一方、転写活性ドメインを除去した、dn-cbfa1を発現させると、軟骨細胞の肥大化・石灰化は完全に阻害された。 4)Cbfa1を鶏胚肢芽に強制発現させると内軟骨性骨化の加速と関節癒合が誘導された。 5)軟骨細胞におけるcbfa1の発現はBMPの添加によっても、著明には促進されなかった。 6)dn-cbfa1を発現させた軟骨細胞にBMPを添加すると、肥大化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性が上昇し、dn-cbfa1による肥大化の阻害が一部回復した。 7)Cbfa1を軟骨組織に特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて、内軟骨性骨化の著明な亢進、永久軟骨の骨化および関節と椎骨の癒合が誘導された。 8)dn-cbfa1を軟骨組織に特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスにおいて、内軟骨性骨化の顕著な遅延が観察された。 上記の結果より、cbfa1の軟骨細胞における発現は軟骨細胞の肥大化・石灰化に必須であり、その発現制御は内軟骨性骨化による骨格形成において、非常に重要な役割を果たすことが判明した。一方、BMPの作用発現におけるcbfa1の関与を裏付ける結果は得られず、骨芽細胞の分化調節におけるBMPのシグナル伝達機構と軟骨細胞のそれは異なることが示唆された。
|