研究課題/領域番号 |
11671840
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
前田 定秋 摂南大学, 薬学部, 教授 (00135732)
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研究分担者 |
吉岡 靖啓 大阪大学, 薬学部, 助手 (40330360)
松田 敏夫 大阪大学, 薬学部, 教授 (00107103)
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キーワード | 炎症 / 痛み / 一酸化窒素 / ブラジキニン / 培養三叉神経節細胞 / 細胞内カルシウム / Writhing反応 |
研究概要 |
初代培養三叉神経節細胞を神経突起が伸長した状態になるまで培養し、ブラジキニンを作用させた時に生じる細胞内カルシウムの上昇に対して一酸化窒素発生剤(NOC12,SIN-1)が著明に増強することを見出し、この作用が、グアニル酸シクラーゼの活性化を介した細胞外からのカルシウム流入を促進することによるものであることを明らかにしてきた。このことは、一酸化窒素が生体内において一次知覚神経の自由神経終末(痛覚受容器)における痛みの受容を増強する作用を有することを示唆している。そこでマウスを用いて、ブラジキニンにより誘発される痛みに対する一酸化窒素の作用を検討した。 ブラジキニンを直接マウス腹腔内に投与しても疼痛反応(writhing)がみられらなかったので、ブラジキニンの産生を介してwrithing反応を起こすことが知られているカオリンを腹腔内に投与し、プロスタグランジンE2(PGE2)および一酸化窒素発生剤の影響を検討した。PGE2はカオリン誘発writhing反応の回数を著明に増加させ、また、PGの受容体のアゴニストも同様の作用を示した。一方、一酸化窒素発生剤のNOC12も用量依存的にカオリン誘発writhing反応回数を増加させたが、その程度はPGE2より小さかった。そこで、内因性に産生される一酸化窒素の痛みの受容に対する影響を見るために、生体内で一酸化窒素合成酵素を誘導して一酸化窒素を産生することが知られているlipopolysac charide(LPS)をマウスに投与して疼痛反応に対する影響を検討した。LPSを腹腔内に投与した後、腹腔マクロファージを採取して培養を行うと、LPSの用量に依存して一酸化窒素が産生・遊離された。このLPSによる一酸化窒素の産生は、マウスに一酸化窒素合成阻害剤を前投与することにより抑制された。また無処置マウスから調製したマクロファージにLPSを作用させると一酸化窒素が産生・遊離された。マウス腹腔内にLPSを全投与することにより、カオリン誘発writhing反応回数は著明に増加し、この増加は一酸化窒素合成阻害剤の投与により完全に抑制された。これらの結果から、LPS投与により産生・遊離された一酸化窒素が一次知覚神経終末に作用し、ブラジキニンにより誘発された痛みを増強することが示唆された。 本研究により、一次知覚神経終末において、一酸化窒素はプロスタグランジンE2と同様にブラジキニンにより誘発された痛み刺激に対して増強作用を有することが明らかとなり、生体内において一酸化窒素が発痛助物質として機能していることが示唆された。
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