骨芽細胞において特異的に産生されるタンパク質であるオステオカルシン遺伝子の発現調節機構を明らかにすることは、骨芽細胞分化の解明のために非常に重要である。さきに研究代表者は、オステオカルシン遺伝子発現には転写開始点上流域に、骨芽細胞特異的な転写調節因子が結合し転写を活性化することを明らかにしてきた。しかし、骨芽細胞分化には転写段階のみならず転写後の翻訳段階での制御についても考慮する必要がある。本研究では、骨芽細胞に存在するRNA結合タンパク質による翻訳段階における制御が、骨芽細胞の分化に対してどのように機能するかについて明らかにした。オステオカルシンmRNAの骨誘導タンパク質(BMP)による翻訳制御調節を検討するために、シュークロースグラジィエント密度勾配遠心法によるポリゾーム解析を行った。骨芽細胞分化に伴ってリボゾームの多く結合したオステオカルシンmRNAが増加していた。次に、マウスオステオカルシン遺伝子をクローニングし、翻訳制御領域を同定するためさまざまな長さの5'非翻訳領域ならびに3'非翻訳領域を挿入したレポータープラスミドの作製を行った。カチオン性リポソームを用いた遺伝子導入法によってこれらのプラスミドを未分化間葉系細胞に導入し、組み換えBMP-2の添加による骨芽細胞分化によってレポーターの活性上昇が認められる領域を同定した。同定した領域の合成RNAをプローブとしたゲルシフトアッセイから、骨芽細胞分化に伴ってRNAへの結合が増加する複数の翻訳制御RNA結合タンパク質の候補を認めた。本研究によってオステオカルシン遺伝子のUTRに結合し翻訳制御に機能するタンパク質が、骨芽細胞の分化において重要であることが明らかになった。
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