研究概要 |
唾液分泌は体液浸透圧・体液量の変化および自律神経活動等の影響を受けやすい。飲水行動発現のメカニズムについて不明な点が多いが、唾液分泌の減少により渇きを覚え飲水行動を起こすのも原因のひとつであると考えられている。この機構を調べるために、無麻酔・無拘束ラットを用いて実験を行った。ラットの耳下腺および顎下腺の導管にカニューレを装着し、唾液分泌量を測定した。安静時唾液はほとんど認められなかったので、エサを与えることによる反射唾液を指標とした。一定量の固形食摂食により分泌された両側耳下腺からの唾液量にほとんど変動が認められなかったことから、ラットは通常両側咬合により摂食をおこなっているという筋電図学的報告を支持する結果を得た。固形食,粉末食,液状食を与えた時の耳下腺唾液を測定した。固形食および粉末食では多量の唾液が分泌されたが液状食ではわずかであった。一方、顎下腺では、液状食でも耳下腺に較べ有意に多い唾液分泌が観察された。また毛なめずりにより顎下腺唾液の分泌が認められた。このことは、耳下腺唾液と顎下腺唾液の機能の違いを支持している。以上の基礎的データを踏まえ、浸透圧刺激による唾液分泌の変化を調べた。腹腔内高張食塩水投与により、一定量の固形食を食べる時に分泌される唾液量は増加したが、分泌速度は減少した。また、24時間絶水による浸透圧刺激でも同じ様な結果が得られた。飲水後ただちに唾液分泌量および分泌速度はコントロールレベルまで低下した。しかし、正常な唾液分泌に回復するまでに2日以上かかった。これらの結果より、浸透圧刺激により、反射唾液の分泌速度が減少することが解った。また、安静時唾液分泌および粘液の分泌が減少していて口腔内が乾燥していることにより、食べ物を咀嚼・嚥下するのに多量の反射唾液を必要とすることが考えられた。
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