研究概要 |
唾液腺細胞には開口分泌の際、分泌顆粒膜と細胞膜のドッキング・融合に関与すると考えられている各種のSNARE蛋白質が存在する。しかし、各SNARE蛋白質間の相互作用や機能には不明な点が多い。そこで、本研究ではSNARE蛋白質が唾液腺の開口分泌に関与している確実な証拠を得るため、クラゲの蛍光蛋白質であるgreen fluorescence protein(GFP)とSNARE蛋白質のキメラ蛋白質を唾液腺細胞に発現させ、SNARE蛋白質の局在部位、および、分泌刺激に対する応答を生きた唾液腺細胞で可視化することを試みた。また、GFP-SNAREキメラ蛋白質を免疫沈降し、各SNARE蛋白質間の相互作用を調節する蛋白質の単離同定を試みている。これまでに得られた結果を示す。 1)VAMP-2,SNAP-23,Syntaxin-4,VAP-33をPCR ク口ーニングによりGFPの発現ベクターに組み込み、COS-7細胞、ヒトの耳下腺由来の培養細胞であるHSY細胞に導入し、各SNARE蛋白質の存在状態を調べた。その結果、VAMP-2はゴルジ野に,SNAP-23は細胞質に均一に,Syntaxin-4とVAP-33は細胞質の特異的なオルガネラに発現していた。 (2)ラット耳下腺からプライマリー腺房細胞を調製し、上記キメラ蛋白質を発現させ、局在部位および分泌刺激に対する応答を調べているが、発現の効率、腺房細胞の形態維持、分泌刺激に対する反応牲を改善する必要がある。さらに、ラット顎下腺にエレクトロポーレーション法でGFP-SNARE発現べクターを導入し、SNARE蛋白質の発現部位を凍結切片上で観察している。 (3)COS-7細胞にSNARE蛋白質を様々な組み合わせで発現させ、抗体で免疫沈降後、SNARE蛋白質間の相互作用を、また、ラット耳下腺のプライマリー腺房細胞にSNARE蛋白質を単独で過剰発現し、唾液腺細胞内での相互作用を調べている。
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