研究概要 |
ラット耳下腺から基底側膜を単離し,cAMP存在下で[γ-^<32>P]ATPとインキュベートすると膜のNa^+,K^+-ATPaseがリン酸化され,このリン酸化はPKAの特異的な阻害剤である[5-24]PKIペプチドによって完全に阻害されたことから,膜に結合したPKAによることを昨年度,明らかにできた。 今年度,単離した基底側膜でアンカリングプロテイン(AKAP)が機能しているかどうかを膜レベルで検討した。基底側膜にcAMPを添加してインキュベートして洗浄した後に,cAMP存在下で[γ-^<32>P]ATPとインキュベートしてもNa^+,K^+-ATPaseはリン酸化されなかったこと,PKA触媒サブユニットを欠損した基底側膜に外因性のPKA触媒サブユニットを添加して膜結合型PKAホロ酵素を再構成すると,Na^+,K^+-ATPaseをリン酸化できたことから,PKAの調節サブユニットがAKAPを介して膜に固定されていると考えられる。そこで,ラット耳下腺のAKAPの存在をRT-PCR,ウエスタンブロット法で調べた結果,AKAP-150サブタイプが検出された。AKAP-150が耳下腺でアンカリングプロテインとして機能しているかどうかをオーバーレイアッセイ法で調べた結果,フィルター上にブロットされた基底側膜のAKAP-150にPKAのRII調節サブユニットが結合した。さらに,RII調節サブユニットに対する特異抗体でAKAP-150が共沈した。以上の結果はAKAP-150が基底側膜中でPKAと複合体を形成して機能していることを示すものである。 以上をまとめAmerican Journal of Physiology,Cell Physiology 279,:C1516-C1527,2000に掲載することができた。また,このテーマで2000年3月に第105回日本解剖学会のシンポジストに選択され口演できた。さらに,2000年12月に第45回日本唾液腺学会で学会奨励賞を受賞できた。 また,2001年3月に京都で開催される第78回日本生理学会の腎尿細管のイオンチャネルおよび輸送担体の発現と機能調節部門のシンポジストにも内定している。
|