研究概要 |
1.ラット耳下腺から基底側膜を単離し,cAMP存在下で[γ-^<32>P]ATPとインキュベートすると膜のNa^+,K^+-ATPaseおよびNa^+-K^+-2Cl^-cotransporterを含む種々の膜蛋白質が膜由来の内因性のPKAによってリン酸化された。 2.ラット耳下腺のアンカリングプロテイン(AKAP)をRT-PCR,ウエスタンブロット法で調べた結果,AKAP-150サブタイプが検出された。オーバーレイアッセイ法で調べた結果,フィルター上のAKAP-150にPKAのRII調節サブユニットが結合した。RII調節サブユニットに対する特異抗体でAKAP-150が共沈した。以上の結果からAKAP-150が基底側膜中でPKAと複合体を形成していることを明らかにした。 3.ラット耳下腺から遊離細胞を調製し,イソプロテレノール刺激するとNa^+-K^+-2Cl^-cotransporterのN-末端がリン酸化され,Na^+,K^+,2Cl^-の共輸送の促進およびブメタナイドの結合量が増加することを明らかにした。 4.Na^+-K^+-2Cl^-cotransporterはin vitroの系でAKAP/PKA複合体およびPKAによって直接リン酸化された。しかし,イオンの共輸送活性およびブメタナイドの結合量は変化せず,機能調節に関与するN-末端部分のリン酸化も全く認められなかった。 5.遊離細胞をジギトニンでパーメアビライズした遊離細胞にcAMPを添加し,受容体を介さず直接PKAを活性化すると,Na^+-K^+-2Cl^-cotransporterの機能調節に関与するN-末端のリン酸化が認められた。 6.以上の結果より,Na^+-K^+-2Cl^-cotransporterの機能調節に関与するリン酸化部位はPKAによって直接リン酸化されるのではなく,PKAのリン酸化カスケードによってリン酸化されることを明らかにできた。
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