カルデクリンは我々により膵臓から精製クローニングした新規血清カルシウム降下因子であり、急性膵炎にともなう低カルシウム血症の惹起因子と考えている。 我々は本因子がプロテアーゼ構造とプロテアーゼ活性を持つこと、一方、血清カルシウム降下活性はプロテアーゼ活性と相関しないこと、また血清カルシウム降下作用は骨吸収抑制作用によることを明らかにしてきた。 1、本因子の組換えフラグメント検索の結果、骨吸収抑制作用を表わすアミノ酸配列を明らかにした。またこのアミノ酸配列を基に合成ペプチドを作製し、骨吸収抑制活性を確認した。このアミノ酸配列は骨吸収抑制に係わるホルモン、サイトカインのいずれとも相同性が認められず新規の骨吸収抑制経路の存在を示唆した。 2、カルデクリンは膵臓以外に骨格筋に発現している事が明らかにした。筋管細胞へ分化する培養筋芽細胞を用いた検討で、カルデクリンは筋肉の分化とともに発現が増強した。また、カルデクリンは筋管細胞から分泌された。1、2の知見からカルデクリンが骨格筋から分泌され、筋肉近傍の長管骨の骨吸収を抑制する可能性が考えられた。即ち、運動により骨塩が増加する原因は運動力学的効果による骨塩の増加が知られているが、骨格筋で合成分泌されたカルデクリンにより骨格筋近傍の骨吸収が抑制され骨塩が増加している可能性が考えられる。 3、ウサギ骨髄細胞におけるカルデクリンの骨吸収抑制に係わる遺伝子を検索する為に、ウサギ骨髄細胞を用いてカルデクリン投与により変動をうける遺伝子をデイファレンシャルディスプレイ法で検索を行ったが、いまだ特色ある遺伝子は検索されておらず引き続き検索を続行している。
|