カルデクリンは膵臓から精製クローニングした新規血清カルシウム降下因子であり、急性膵炎に伴う低カルシウム血症の惹起因子と考えられる。カルデクリンはキモトリプシン活性を持ち、発現細胞では前駆体の形で合成され分泌される。カルデクリンによる血清カルシウム降下作用はプロテアーゼ活性と相関しないこと、また血清カルシウム降下作用は骨吸収抑制作用によることを明らかにしてきた。 カルデクリンが骨組織で骨吸収抑制機能を果たしている以外に他の組織におけるカルデクリンの機能を検討するために、PTH/PTHrPによる骨吸収の促進をカルデクリンが抑制する効果に着目した。PTH/PTHrPは、脳組織においても発現しており脳神経の生理機能に重要な役割を行っている。そこで、カルデクリンのラット脳における発現を検討した。RT-PCRとWestern blot解析の結果、ラット脳組織にカルデクリンが検出できた。カルデクリンmRNAは、生後1-28日間の実験基間、恒常的に発現していた。また、In situ hybridization結果、カルデクリンは嗅球、大脳皮質、海馬、視床、小脳領域の神経細胞に発現していた。以上の結果より、カルデクリンは中枢神経においてもカルシウムホメオスターシスに重要な役割を果たしている可能性が考えられた。 従って、骨吸収をプロテアーゼ活性非依存的に抑制することや骨格筋で分化に伴い合成分泌されることなどの先の結果をふまえるとカルデクリンは多機能プロテアーゼである。
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