研究概要 |
我々は今までにウサギ耳下腺や顎下腺の分泌刺激を与えることにより細胞内のカルシウムイオン(Ca^<2+>)が上昇し,それにより細胞質に存在する一酸化窒素合成酵素(NOS)が活性化され,生成されたNOがcGMP生成を引き起こすことを明らかにした.今回さらに,NOSの調節因子,およびcGMPの標的分子について検討を行った.ウサギ顎下腺の膜画分にもNOS活性が認められた.膜画分のNOSを可溶化し,部分精製をし,酵素学的性質を検討した結果,細胞質画分に存在するNOSと同一なものであると考えられた.しかし,膜に存在しているときに活性が抑制されていることが認められた.膜成分と考えられるリン脂質の効果を検討したところ,ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸とホスファチジン酸により活性阻害が認められた.これらのリン脂質はNOSの性質の一つであるCa^<2+>の効果に影響することが認められた.これらのことから,NOSは膜近傍ではリン脂質により活性調節を受ける可能性が示された.一方,cGMPの標的としてはcGMPホスホジエステラーゼ(cGMP-PDE)について検討した.受容体刺激によるcGMP生成は,cGMP-PDE阻害剤であるIBMX,MOM-IBMX,また,Zaprinastにより増強された.これらのことは,cGMP-PDEには少なくとも10種類のイソ酵素が知られているが,ウサギ唾液腺にもいくつかのcGMP-PDEが存在することが考えられ,cGMPの標的となっていることが考えられた.
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