マイクロドメインはコレステロールと糖脂質との二次元的な会合により細胞膜上に形成される微小な領域である。特異な陥没構造として古くから電子顕微鏡により観察されてきたカベオラは代表的なマイクロドメインである。またそのような特徴的な構造をもたないマイクロドメインもいろいろな細胞で報告されている。マイクロドメインは通常は細胞表層の細胞膜に存在し、膜タンパク質の中でも脂質修飾をもつタンパク質(グリコシルフォスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質、GPI-anchored protein)などが局在する。一方マイクロドメインの直下にあたる細胞質側の細胞膜の領域には種々の細胞内シグナル伝達タンパク質が集合することが確認されている。その結果として細胞外からの情報の入力を効率よく細胞の内側に伝達できる。すなわちマイクロドメインはタンパク質局在化の足場を提供することにより、細胞膜において外と内をつなぐ巨大な分子装置として機能することが明らかになりつつある。本研究は耳下腺腺房細胞の分泌顆粒膜におけるマイクロドメインの存在とその生理的な役割を検討するものである。従来の研究成果より耳下腺腺房細胞には低分子量GTP結合蛋白質ADP-ribosylation factor(Arf)が存在し、GTP依存的に分泌顆粒に移行することを明らかにしている。最近の研究ではArfの標的のひとつと考えれられているホスホリパーゼDが細胞膜のマイクロドメインに局在することが報告されている。そこで平成11年度においては分泌顆粒においてマイクロドメインにホスホリパーゼDが局在する可能性を検討した。
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