研究概要 |
ヒト骨芽細胞および破骨細胞におけるアドレアリン受容体の発現をRT-PCRで調べたところ、IP3/DGを伝達系とするα1B受容体、cAMP産生を制御するα2B受容体、さらにcAMP産生に関わるβ2受容体のmRNAが恒常的に発現していることを認めた。そこで、これら受容体のアゴニストが骨芽細胞に及ぼす影響を検討したところ、エプネフリン(1μM)のβ受容体を介したIL-6,IL-11,PGE2,ODF(Ostcoclastogenesis differentiation factor)の誘導を観察した。現在、エピネフリンによるIL-6およびIL-11産生には、protein kinase Aやp-38 mitogen-activated protein kinase系およびAP-1(activating protein-1)が関与している可能性を、各種阻害剤を用いた実験で示している。また、エピネフリンが、このような破骨細胞の形成を促進するサイトカインを誘導することから、エピネフリンの破骨細胞形成に及ぼす影響を骨髄培養系で検討した。その結果、βーアゴニストであるイソプロテレノールが著しい破骨細胞形成を示し、エピネフリンの破骨細胞形成作用に新たな知見を加えた。次に、ニューロトロフィン(NGF,BDNF,NT-3)やネトリン(神経回路の形成において、神経線維を誘引する因子「ケモアトラクタント」としての役割を担う)とセマフォリンIII(神経線維に反発する因子「ケモリペラント」の発現をヒト骨芽細胞および破骨細胞にて検討したところ、これら因子が遺伝子および蛋白レベルで構成的に発現していることを認め、これら骨代謝を担う細胞には交感神経や感覚神経などの神経線維の誘引を制御する機構を備えている可能性を示した。
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