骨関連細胞と神経に関する分子薬理学的研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11671861
• 研究機関: 愛知学院大学
• 研究代表者: 戸苅 彰史 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (80126325)
• 研究分担者: 蛭川 孝史 愛知学院大学, 歯学部, 助手 (60340147) ; 茂木 眞希雄 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (00174334) ; 新井 通次 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (20097538) ; 近藤 史実 愛知学院大学, 歯学部, 助手 (70301629)
• キーワード: 骨芽細胞 / 破骨細胞 / β-受容体 / 骨吸収 / 破骨細胞形成 / VIP / CGRP / 交感神経

研究概要

本年度は、交感神経の伝達物質としての役割を有しているVIP(vasoactive intestinal peptide)およびノルエピネフリンの破骨細胞の形成および活動に及す相互の影響を調べることを目的とした。破骨細胞の形成にはマウスの骨髄細胞培養系を、破骨細胞活動に対してはヒトあるいはウサギより単離した破骨細胞を用いた。すなわち、骨芽細胞および破骨細胞に存在している種々のニューロペプチド/アドレナリン受容体の骨吸収に関連する生理的意義を検討した。マウス骨髄培養系を用いた研究において、β-受容体刺激(イソプロテレノール)はマウス骨髄細胞培養系での破骨細胞形成およびODF(osteoclast differentiation factor)のmRNA産生を促進したが、この作用はVIPにより抑制され、さらに、破骨細胞の活動に抑制的な影響を及すCGRP(calcitonin gene-related peptide)およびIFN-γによっても抑制された。一方、単離破骨細胞を用いた研究では、β-受容体刺激されたヒト破骨細胞が象牙切片上の骨吸収能を著しく亢進させることを見い出した。この破骨細胞活動の亢進は、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ、インテグリンのαV鎖、カーボニックアンヒドラーゼII、カテプシンKやカテプシンLの遺伝子発現の促進およびアクチンリングの形成を伴っていた。このβ-受容体刺激による活動亢進はα-受容体刺激においては認められなかった。この亢進作用に及すVIPおよびCGRPの効果については現在検討中である。これらの知見は、交感神経のβ-受容体刺激が破骨細胞の形成および活動に促進的影響を及ぼしていることを示している。また、このβ-受容体刺激による破骨細胞形成促進が交感神経の伝達物質VIPにより抑制されることより、交感神経が骨吸収を制御する生理的役割を演じている可能性を示唆している。今後、この関連について、さらなる検討が必要と思われる。

研究成果

• [文献書誌] Togari, A.: "Expression of mRNAs for axon guidance molecules, such as semaphorin-III, netrins and neurotrophins, in human osteoblasts and osteoclasts."Brain Research. 878. 204-209 (2000)
• [文献書誌] Kinpara, K.: "Osteoclast differentiation factor in human osteosarcoma cell line."Journal of Immunoassay. 21(4). 327-340 (2000)
• [文献書誌] Mogi, M.: "Anti-apoptotic action of nerve growth factor in mouse osteoblastic cell line."Life Sciences. 67. 1197-1206 (2000)
• [文献書誌] Togari, A.: "Expression of mRNAs for neuropeptides receptors, adrenergic receptors, neurotrophins and semaphorin III in human osteoblasts and osteoclasts."Frontiers of the Mechanisms of Memory and Dementia. (Elsevier). 163-164 (2000)
• [文献書誌] Kondo, A.: "Signal transduction system for interleukin-6 and interleukin-11 synthesis stimulated by epinephrine in human osteoblasts and human osteogenic sarcoma cells."Biochemical Pharmacology. 61. 319-326 (2001)
• [文献書誌] Takeuchi, T.: "Adrenergic stimulation of osteoclastogenesis mediated by ODF expression in MC3T3-E1 osteoblast-like cells."Biochemical Pharmacology. 61. 579-586 (2001)