研究課題/領域番号 |
11671864
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 誠 新潟大学, 歯学部・附属病院, 講師 (50107778)
|
研究分担者 |
木村 信 新潟大学, 歯学部, 助手 (80251825)
朔 敬 新潟大学, 歯学部, 教授 (40145264)
程 くん 新潟大学, 歯学部, 助手 (40207460)
依田 浩子 (米持 浩子) 新潟大学, 歯学部, 助手 (60293213)
|
キーワード | 唾液腺 / 多形性腺腫 / 前癌病変 / 多形性腺腫内癌腫 / 細胞周期マーカー / 癌抑制遺伝子 / PCNA / PCR |
研究概要 |
今年度は、多形性腺腫に限定して検索をおこなった。すなわち唾液腺多形性腺腫腫瘍内の異型細胞の発生状況、存在状況を臨床病理学的および病理組織学的に検索し、その病理学的意義、前癌病変としての認知可能性を検討した。 材料には多形性腺腫101例と十分な症例数をもちいて臨床的事項と対比して病理組織学的に検討し、顕性癌の前段階とみなすべき病巣、大型異型細胞の検索、その出現様式、頻度に対する評価をおこない、フォルマリン固定パラフィン連続切片をもちいてp53遺伝子産物および増殖細胞核抗原(PCNA)免疫組織化学的染色をおこなった。 この結果、多形性腺腫内に前癌病変あるいは大型異型細胞の出現する頻度は、検索した症例中60%ちかくにもおよんだ。多形性腺腫腫瘍病巣内における異型細胞の出現様式および出現頻度により、そのうちp53遺伝子産物核内陽性細胞が巣状をなす微小癌型は6症例 6%、いずれも直径1mmに満たない微小な範囲で胞巣を形成していた。びまん性に分散する散在型15症例 15%、ごく少数出現する孤立型は30症例 30%であった。このうち微小癌は腫瘍の大きさとの関連はなく経過の長い症例に発生する傾向があった。これは従来の多形性腺腫内癌種の発生率や発生傾向と同様であり、したがって、微小癌の発育によって顕性癌が多形性腺腫内に生じる可能性が示唆された。また、異型細胞はおもにPCNA免疫陽性の増殖能の高いシート状充実性胞巣に出現し、軟骨様あるいは硝子様などの間質成分の豊富な部分にはみいだされなかった。p53遺伝子産物およびPCNAの核内陽性は、ほとんどの異型細胞にみられ、PCNA陽性はp53遺伝子産物陽性よりも広範囲の細胞にみとめられたことから、細胞増殖回転の速い細胞集団でなんらかのp53遺伝子異常がおこっている可能性が強く示唆され、これらの異型細胞の増殖によって微小癌が形成され、多形性腺腫内癌へ発育していく段階的な進展があると推測された。 今後は、パラフィン切片からDNAを抽出し、各エクソン断片についてのPCR増幅し、これをSSCP法で解析し、塩基配列を直接確認して、p53遺伝子変異様式を明らかにし、唾液腺前癌病変の疾患概念を明確にしたい。
|