研究概要 |
細胞質型phospholipase A2(cPLA2)は細胞膜リン脂質のsn-2部位に結合して加水分解によりアラキドン酸を遊離させる酵素として見い出された。アラキドン酸カスケードの律速酵素として重要な働きを有するcPLA2は通常は細胞質に局在するが、細胞の活性化などによるカルシウムイオン濃度の上昇により、cPLA2タンパク質内のカルシウムイオン依存性リン脂質結合ドメイン(CaLBドメイン)の関与によって核膜周辺へ移行することが知られている。よって本研究では昨年までcPLA2の細胞内局在がどのようなメカニズムによって変化するのかを特にCaLBドメインやリン酸化部位に注目して検証し1,cPLA2タンパク質中央部には核外移行シグナル配列があること、2,cPLA2タンパク質中央部、アミノ、カルボキシル両末端領域がそれぞれ相互作用することを明らかにしてきた。しかし、これらのドメインのみでは核膜のみに移行することの説明がつきにくい。そこでcPLA2と相互作用する因子について解析し、1,cPLA2のみでは常に細胞質に存在しているが、転写因子B-Mybと同時に遺伝子導入するとcPLA2は核に局在するように変化すること、2,cPLA2のアミノ、カルボキシル両末端領域とB-Mybが結合すること、3,B-Mybとファミリーを形成している癌遺伝子c-Mybタンパク質とは全く相互作用しないことなどの結果が得られた。cPLA2タンパク質内での相互作用の結果と総合して、cPLA2の各ドメイン間の相互作用がカルシウムイオンやcPLA2タンパク質のリン酸化により緩くなり、そこへ核内に移行する転写因子B-Mybが接触し、基質が存在する場所へ移動させる機序が示唆される。
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