平成11年度では、急性GVHDのラット・モデルの確立、口腔粘膜初期病変の免疫病理学的特徴および口腔粘膜の病変局所におけるチューブRT-PCR法によるサイトカインmRNA発現の検討を中心に行った。口腔粘膜GVHDの病変は、上皮ケラチノサイト(KC)でのICAM-1発現様式により、免疫組織化学的な程度分類を行った。KCでのICAM-1発現を確認した切片を利用したRT-PCR法では、インターフェロン・ガンマ(IFN-g)と腫瘍壊死因子(TNF-a)の発現を認めた。この結果は、両サイトカインの局所産生が、KCでのICAM-1発現を誘導したものと考える。サイトカイン産生細胞に関しては、免疫組織化学的にKCでのICAM-1発現が開始される初期の病変では、マクロファージ系細胞群ならびにリンパ球・サブセットの著しい浸潤様式を認めない。従って、通常考えられているThリンパ球が、直接的にIFN-gを産生したとは考えにくい。現在までのところ、ごく少数ではあるがNK細胞が、初期病変に浸潤する結果を得ている。以上のことから、今年度の実績としては、口腔粘膜GVHDの初期病変は、担当細胞は確実ではないが、NK細胞などの細胞からIFN-gが産生され、KCでのICAM-1発現がされる。そして、KCでの接着分子に対して細胞傷害性T細胞が、LFA-1/ICAM-1接着経路を利用して上皮層へ浸潤し、上皮破壊機構を亢進するものと推測する。しかしながら、サイトカイン産生細胞の直接的な検出に関しては、通常のln Situhybridization(ISH)法による検出では困難であることがわかった。そこで、平成12年度には、ISH法の感度を上げる工夫とIn situ RT-PCR法の応用を計画している。
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