研究概要 |
慢性の限局した炎症性疾患である歯周病の感染初期の局所にはTリンパ球が優位であり、歯周病が進行するにつれてBリンパ球や形質細胞が顕著になると言われ、歯周病がより進んだ段階では局所の免疫調節のバランスは崩れていることが示唆される。細胞性免疫と体液性免疫とは完全に独立した系ではなく、2つの系はその調節機構やエフェクター機構において相互に関連している。特に、ヘルパーT細胞は体液性免疫の調節機構において重要な機構を司っており、中でもTh2型細胞はIL-4およびIL-6を産生することによってB細胞を活性化するので、活性化B細胞が産生する抗体が局所における細菌の中和とオプソニン化を亢進し、歯周病発症を阻止する方向に働くと考えられる。そこで、歯周病原菌の病原因子に特異的なTh2型細胞をin vitroでクローニングすることを試み、本年度はTh2クローンの作製方法を確立した。 1. 免疫抗原としてP.gingivalisの分子量40,000の外膜タンパク質起源の組み換えタンパク質r40-kDa OMPを用いた。 2. Fischer ratを免疫動物として選択し、抗原とcomplete Freunds'adjuvantを等量混ぜて作製したエマルジョンを尾の基底部皮下に注入し、Rat生体内にて抗原特異性を持ったヘルパーT細胞を誘導した。 3. 注入リンパ節である鼡径部・旁大動脈リンパ節から細胞を取り出した。panning法を用いてBリンパ球ならびにCD8^+細胞を除去し、CD4^+-T細胞画分を得、in vitroに移した。抗原に加えて、同系ラットの脾臓をfiller cellsとして、また脾臓細胞培養のConA刺激上清をT細胞増殖因子として培養に添加した。 4. 長期培養したT細胞を抗原・filler cellsおよびT細胞増殖因子の存在下に限界希釈法にてクローニングし、r40-kDa OMPに依存して増殖するクローンを得た。
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