病原体に対する感染防御機構の多くは抗体産生と細胞性免疫との二重の防御機構によって成り立っているとされる。ヘルパーT細胞はTh1型とTh2型に分類され、細胞性免疫の調節ばかりでなく、体液性免疫の調節機構において重要な役目を担っている。Th1型細胞誘導が歯周組織破壊あるいは骨吸収を誘引するとされるのに反し、Th2型細胞はIL-4およびIL-6を産生することでB細胞を活性化し、抗体産生を促す。産生された抗体は、局所において細菌の中和とオプソニン化を亢進し、歯周病発症を阻止する方向に働くと示唆される。 本研究はPorphyromonas gingivalis外膜タンパク質に特異的なTh2型ヘルパーT細胞のクローニングを目的とした。ラットをP.gingivalis外膜組換えタンパク質で免役した後、局所リンパ節を取り出し、anti-CD4抗体カラムを用いたpunning法にてCD4^+-T細胞を先ず分画し、ついで抗原の存在化に、この分画をin vitro実験系に移した。抗原刺激を繰り返し、長期培養細胞株を得た。GenBankに登録されたCD4遺伝子配列を基にプライマーを作成し、PCR法にてCD4phenotypeを発現するTh2クローンを、長期培養細胞株の中から選別した。次いで、CD4^+-Th2クローン細胞からRNAを抽出し、IL-4mRNAの発現を検討し、加えて、IL-4産生量をELISA法を用いて定量した。外膜タンパク質やP.gingivalis菌株に対するTh2クローンのin vitro proliferative responsesを^3H-thymidineのuptakeによって測定した。加えて、このTh2クローンにおけるIL-4、IL-5、IL-10およびINF-γのmRNA発現、並びに、これらサイトカイン産生に及ぼす細菌表層タンパク質や各P.gingivalis菌株の影響を検索した。
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