研究概要 |
本研究は加齢と粘膜免疫の関係を追及する一環として、IgA循環帰巣経路におけるIgA誘導部位ならびにIgA実効部位における免疫応答調節機構の加齢による変化を追及したものである。すなわち、IgA誘導部位としてマウス鼻腔リンパ組織Nasal Associated Lymphoid TissueやIgA実効部位である唾液腺、腸管および肺臓に焦点をあて、1)粘膜免疫誘導部位と実効部位の関係、加齢による 2)唾液のIgA免疫防御機構を調節している唾液腺T細胞のサイトカイン活性や粘膜領域におけるケモカインの活性に関する細胞生物学的・分子生物学的検討、ならびに 3)口腔細菌(Streptococcus mutans)に対する抗原特異的IgA免疫応答の変化について粘膜アジュバント(mutant CT)を用い、細胞生物学的・分子生物学的検討を行ったものである。 Ovalbumin(OVA)を用いた経粘膜投与した場合,高齢マウスでは粘膜領域において抗原(OVA)特異的IgA免疫応答に明らかな低下を認めた。しかし,T細胞非依存性抗原に対する応答について検討したところ,加齢群ではLPS特異的IgM免疫応答に高い傾向を認めたが,LPS特異的IgA免疫応答に差は認められなかった。また、RT-PCRによるTLR-2およびTLR-4遺伝子発現の検討から、加齢によってadoptive immunityよりは、innate immunityが変化することを示唆した。 さらに、齲蝕予防をめざした経鼻免疫ワクチン開発に関する研究では、Streptococcus mutansI/II antigenと粘膜アジュバントであるMutant Cholera toxin(mCT)を用いて検討を行い、mCTとI/II antigenを併用した経鼻免疫が,齲蝕予防に有効であることを証明した。
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