回転パノラマ撮影法は1枚のフィルムに顎骨全体が展開写真として得られ、一般の歯科診療に広く普及している。しかし、断層写真であるために、画像にボケや歪みがあり、また、頚椎などの障害陰影が前歯部とかさなり、診断に使用できない場合があった。 申請者は1998年の第39回日本歯科放射線学会で、部分投影データによるコンピュータパノラマ断層装置に関する新理論を発表した。この理論は、顎骨の部分投影データを一旦コンピュータに取り込み、その投影データにボケや障害陰影を補正するフィルタ関数を作用させた後、逆投影することにより、パノラマ像が形成されることを数学的に証明したものである。ここで、投影データに最適化されたフィルターを作用させて投影することにより、ボケ、歪み、障害陰影のないパノラマが形成できることを示唆された。 そこで、申請者は画像処理装置を使用し、数学的に証明されている新理論によるパノラマ像再構成ソフトを実際に開発した。その結果、鮮鋭な断層像を得ることが可能となった。しかし、画像再構成時間が1時間以上かかり実用化するための障害となっていた。そこで画像再構成関数の最適化をはかり、その結果Pentium 1GHzのパーソナルコンピュータでも、20分程度で画像の再構成が可能となった。
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