歯性感染症と全身疾患との関わりは臨床的に認められているが、その発症メカニズムはまだ不明な点が多い。菌血症による血行性感染もその1つと考えられており、細菌性心内膜炎や人工関節への感染などを生じる危険性がある。そこで我々は歯性感染症の1つである根尖病巣が、菌血症を誘発する可能性について動物実験(ネコ)で検討した。 根尖病巣はネコの歯牙を抜髄・根管拡大後、細菌培養液(P.gingivalis単独、あるいはS.aureus、S.sanguis、Enterococcusと混合)を根管内に接種して作成した。P.gingivalisは、collagenaseなど根尖歯周組織を破壊すると考えられる酵素活性を有し、また感染根管からも多く分離されている。その他の細菌は予備実験で根管への血行性感染率が高いことを確認したものである。4週間後に血液の細菌培養検査を行ったが、菌血症の発症は確認できなかった。しかし過去の動物実験においては、根尖病巣が原病巣である菌血症の発症が報告されていることから、菌血症を生じうる根尖部の病態や起炎菌について、さらに検討する必要があると考えられる。今後は根管内に接種する菌種およびCRP、赤沈値などの炎症マーカーの動態について、さらに検討していく予定である。
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