我々は歯性感染症が全身に影響を及ぼすメカニズムの1つと考えられる菌血症について、動物実験で検討を加えてきた。昨年度は根管内に細菌培養液を接種して根尖病巣を作成し、血液の細菌培養を行ったが、菌血症の発症は確認できなかった。 そこで本年度は根尖病巣よりも病変部面積が広い歯周炎を作成して、検討を加えている。実験的歯周炎の作成はラット下顎第一臼歯の歯頚部にゴム輪を装着して機械的な損傷を加えた後、P.gingivalisを付着させた絹糸をポケット内に挿入して作成した。 P.gingivalisは歯周組織を破壊する酵素活性の他、血小板凝集能を有することが報告されている。またグラム陰性菌の菌体成分であるLPSは動脈硬化に関与することが動物実験で認められている。臨床的には歯周病患者は健常者に比べて動脈硬化性疾患が多いこと、血中脂質濃度およびP.gingivalisに対する抗体価が高いことなどが報告されている。以上のことから本研究では実験的歯周炎由来の菌血症の有無の他、血液凝固系や血中脂質濃度に及ぼす影響、P.gingivalisに対する抗体価の変動などを検討しているところである。
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