従来、ウ蝕処置に際しては、感染象牙質は徹底的に除去すべきとされてきた。そのために、無症状にもかかわらず抜髄を余儀なくされる場合も多く、歯髄の保存を優先した修復処置法の開発が望まれている。 そこで本研究では、抗菌材を添加したフッ素徐放性材料を応用したウ蝕病巣無菌化療法によってin vvoで生じる感染象牙質の再石灰化現象を促進させる条件を検討することを目的とする。 実験2年目の本年では、以下の研究を行った。 1.抗菌剤添加充填材料の物性と抗菌性の経時的変化の検討 充填用グラスアイオノマーに抗菌剤を添加し、その圧縮強度、溶解性、表面劣化、フッ素徐放性について、水中浸漬後の変化を検討した。その結果、抗菌剤を添加した充填用グラスアイオノマーの強度は、水中浸漬後には若干低下するものの、臨床での使用には充分な強度を有することが明らかになった。 2.フッ素徐放性材料の歯質耐酸性に及ぼす影響の検討 抜去歯にフッ素徐放性材料を充填し、長期水中浸漬後に人工脱灰を行い、窩洞周辺部の歯質脱灰量を走査型レーザー顕微鏡を用いて観察した。フッ素除法性材料と接して水中保管した歯質にはフッ素が取り込まれ、同部の耐酸性は向上することが明らかになった。 3.新しく開発されたフッ素徐放性材料(コンポマー)の材料学的検討 コンポマーの圧縮強度、硬さ、フッ素徐放性、色、表面粗さについて、各種飲料水浸漬後の変化を検討した。その結果、コンポマーは、口腔内環境下で安定した材料学的性質を維持することが明らかになった。
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