研究概要 |
平成11年度においては,提出した研究実施計画に基き,焼成法セラミックインレー修復の8年間の臨床評価と,辺縁劣化の定量分析を以下のような方法で実施した. 1)臨床成績:修復後8年のセラミックインレー修復45歯について,U.S.P.H.S.の基準による臨床評価とレプリカ模型の走査電子顕微鏡観察を行った.その結果,82%の症例は良好に経過しているものの,観察期間を通して初めて体部破折による修復の失敗が11%に認められた.また,肉眼的に認められる辺縁破折が24%の症例に発生していた.さらに,走査電子顕微鏡観察より,微小辺縁破折やレジンセメントの劣化などの辺縁劣化が77%の症例に認められ,経時的な劣化が進展していた. 2)辺縁劣化の定量分析:2級セラミックインレー修復を行った上下小臼歯12本について,咬合面を精密印象した.精密印象面における修復物の辺縁を,高精度形状計測変位計を用いてスキャンし,3次元形状測定システムにて修復物辺縁の歯軸方向における断面形状をグラフ化した.そして,辺縁断面図の経時的な重ね合わせを行うことにより,劣化量を面積として表し,画像解析ソフトウエアを用いて辺縁劣化量を算出した.その結果,上顎小臼歯の8年間の平均劣化量は55681μm^2であり,下顎小臼歯では19852μm^2であった.上下小臼歯の劣化量および機能咬頭側と非機能咬頭側の劣化量には有意差が認めらた. 以上のように,本年度の研究より,焼成法セラミックインレーの8年にわたる臨床評価を行った結果,臼歯の保存的な審美修復法として有用であるものの,体部破折に代表される失敗例が発生しており,経時的な劣化が進行し続けていることがわかった.また,セラミックインレーの辺縁劣化量を定量分析することによって,口腔での辺縁劣化挙動を把握することができた.
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