研究概要 |
申請者らは,接着性レジンセメントの物理的性質や歯質およびポーセレンに対する接着性に関する研究を行ってきた.特に審美インレー修復であるCAD/CAMインレーではインレー直下のインレー,レジンセメントおよび象牙質との接着が,また,セメントラインの露出とそれに続くセメントラインの磨耗が臨床上大きな問題点となっていることがわかった.これらの問題点を解決するために,申請者らは重合触媒的機能を発揮するセルフエッチングプライマーの開発を考案した. セルフエッチングプライマーとしてはマレイン酸-HEMAの混合系と触媒としても効果の期待できるアミノ酸誘導体水溶液を比較検討した.これらの水溶液で象牙質を処理したところ,マレイン酸-HEMA系の接着強さは1.2±0.7MPaと象牙質に対してほとんど接着強さを示さなかった.一方,20wt%N-acryloyl aspartic acid(N-AAsp)水溶液処理象牙質では3.4±2.2MPaの接着強さを示した.レジンの接着強さと重合度の経時的変化を調べたところ,重合度は初期においては60%程度であり,時間経過とともに向上した.特に重合度は物性と接着強さに密接に関係していることがわかった. 次にN-AAspの触媒としての効果をFT-IRで測定した.その結果,N-AAspのアミンとしての効果は弱く,触媒としてはN-phenylglycine(NPG)が優れていた.またN-methacryloyl aspartic acid(N-MAsp)との比較でもN-AAspは優れた接着性モノマーであった. よってN-AAspを用いることで優れた重合触媒機能を発揮するセルフエッチングプライマーが開発できると考えられた.
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