研究概要 |
ラットを用いて実験的に惹起した歯髄炎ならびに根尖性歯周炎においてに、免疫組織学的手法を用いて誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、Ia抗原発現細胞の局在について観察すると共に、PGP9.5陽性神経線維の動態について検索を行った。露髄後0.5,1日および1週経過例の歯髄組織では、対照群に比較してiNOS陽性細胞、Ia抗原陽性細胞の両者とも増加していたが、その局在は異なりiNOS陽性細胞は露髄部周囲に形成された小膿瘍近傍に観察されるのに対し、Ia抗原陽性細胞は小膿瘍からやや離れた位置に認められた。2週目以降は歯髄が根尖まで壊死に陥っていた。根尖歯周組織においては、処置後1日までは対照群とほぼ同様の所見を呈していた。1週経過例ではIa抗原陽性細胞は対照群に比較してその数はやや増加していたが、iNOS陽性細胞はほとんど認められなかった。処置後2〜4週経過例では、Ia抗原陽性細胞は減少しており、逆にiNOS陽性細胞が認められたが主として根尖孔部の小膿瘍に接して観察された。処置後6〜8週経過例では、Ia抗原陽性細胞はほとんど観察されず、またiNOS陽性細胞も根尖孔部にわずかに観察されるのみであった。残存歯髄におけるED1陽性のマクロファージ(MΦ)は処置後0.5日から増加しており、処置後1週目まで観察された。根尖歯周組織ではED1陽性のMΦは処置後1週目から増加しており、2〜4週目には著明な浸潤が認められた。しかし、6〜8週経過例では、その数は減少していた。残存歯髄ならびに根尖歯周組織ともED1陽性のMΦの数はIa抗原陽性細胞やiNOS陽性細胞の数よりも多く認められた。PGP9.5陽性神経線維は、残存歯髄においては0.5日から膿瘍の周囲で発芽分岐像が観察された。根尖歯周組織においては、処置後1週目から発芽分岐しており4週目では著明な分岐が観察された。しかし。その後は神経線維の密度は低下していた。
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