研究概要 |
事前に研究用として許可を得たヒト抜去歯を集めて、いくっかの種類のレーザーを用いた予備実験結果から、Er : YAG、Er, Cr : YSGGレーザーが根管拡大への応用が非常に有望であった。さらに詳細な結果を得るため、X線撮影の結果から単根管で比較的大きい根管の歯を選別し、根管口よりEr : YAG、Er, Cr : YSGGレーザーを様々な条件と操作方法で照射した後ファィバースコープを用いて拡大、形成の状態を適宜、観察した。そして最終的には歯根を縦断し、根管の状態を実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて観察した。また、根管内より照射して歯根表面の温度上昇をサーモカップルを用いて測定した。温度上昇に関しては注水下で行なったこともあり、問題のない範囲内であった。Er : YAG、Er, Cr : YSGGレーザーを用いた方法では適切な照射条件を使用することでアピカルシートの形成、根管拡大、そしてデブリスやスミアー層のほとんどないきれいな根管壁ができた。さらに歯周組織への影響を組織学的に調べるため、Er : YAGレーザーを使用してラットを用いた動物実験を行った。下顎第1臼歯の近心根を抜髄した直後にEr : YAGレーザーを100-300mJ/pulseの設定条件で照射すると100mJでは歯周組織に熱的影響を与えることなく根管拡大ができた。また、下顎第1大臼歯の近心根に感染根管を作製し同じ照射条件で照射すると、100mJでは歯周組織に熱的影響を与えることなく根管拡大ができた。200mJの照射条件では抜髄症例ではかなり多くに熱的障害が認められたが、感染根管の症例ではいくつかに認められたにすぎなかった。しかし、300mJの照射条件では抜髄、感染根管症例の両方にかなり熱的障害が認められた。このことから適切な照射条件を用いることにより歯周組織に熱的影響を与えることなくEr : YAGレーザーで根管拡大ができることが示唆された。今後さらに免疫組織学的手法等を用いて詳細に熱的影響を調べ、照射条件以外でいかに影響を少なくするか検討する必要がある。
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