研究概要 |
本研究の目的は顎口腔機能の不調和が全身におよぼす影響を平衡機能,自律神経機能,頚椎の変化などから検討を行うことである.本年度は咬合接触状態と体重4分割連続値の関連についての基礎的検討を行った. 正常および顎関節症を有する男女被験者(各群5名,計20名,年齢21〜30歳)に対し,被験者の体重を右前,右後、左前,左後の4部位に分割し計測することのできる四分割バランサーを用い,体重4分割連続値を測定した.一方,歯科用咬合圧測定フィルム(デンタルプレスケール50H タイプR,富士写真フィルム社製)において記録した咬合接触状態は,咬合圧測定システム(OCCLUZER FPD-703,富士写真フィルム社製)にて分析し,咬合接触圧4分割値を算出した.そしてこれらの関連,さらに問診により得られた習慣性咀嚼側などとの関連を検討した. 体重4分割連続値の各被験者ごとの測定時間(60秒間)中のデータのばらつきは一様ではなかったが,一般に男性の方が女性よりもやや大きく,また,男性,女性ともにTMD群の方が正常群よりもやや大きい傾向が認められた. 体重4分割連続値の平均値を各群ごとにみると,正常群では,右前の荷重が一番大きい傾向にあり,正常な被験者でも4部位の荷重が同様ではない可能性が示唆された. 体重4分割連続値は習慣性咀嚼側と左右的に同側の荷重が大きくなる傾向が男性正常群の閉眼時に顕著に認められた.しかしながら,咬合接触圧4分割値は習慣性咀嚼側と反対側の加重が大きくなる症例が多く,傾向が異なった.体重4分割連続値と咬合接触圧4分割値が同様の傾向を示すものは少なく,むしろ反対の傾向を示すものがやや多くみられた. 今後症例を追加し,自律神経機能,頸椎の状態とともに,足底の形態,歩行,姿勢等の習慣性などについても検討を加える予定である.
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