研究概要 |
本研究の目的は顎口腔機能の不調和が全身におよぼす影響を明らかにすることである.本年度はどの歯種の咬合接触状態が全身に大きく影響を与えるのかを明らかにする目的で,個性正常咬合の健康な男性被験者7名に対し,実験的スプリントを用い,咬合接触状態を変化させ,その状態が体重バランスに如何なる影響を与えているのかを8分割バランサーにより検討した. 実験的スプリントは咬合器上で切歯部における垂直的顎間距離を2mmおよび3mmに設定し,前歯部,左側小臼歯部,左側大臼歯部,右側小臼歯部,右側大臼歯部の5種類をそれぞれ中切歯,第一小臼歯,第二大臼歯のみ接触するよう調整,作製した. 測定時の条件は閉眼時における咬頭嵌合位,およびスプリントを単独あるいは組み合わせて用いた実験的スプリント装着位(前歯部,両側小臼歯部,両側大臼歯部,左側小臼歯部,左側大臼歯部,右側小臼歯部,右側大臼歯部)とし,閉眼初期動揺を考慮し,各条件を設定後,20秒後から20秒間計測した. 前後的バランスに関しては咬頭嵌合位に比較して,特に両側小臼歯部,両側大臼歯部にスプリントを装着した場合,前方の荷重が大きくなる症例が多く,その傾向は2mmのスプリントを装着した場合に顕著であった. 左右的バランスに関しては2mmのスプリントを装着した場合,左側大臼歯部を除き,同側の荷重が咬頭嵌合位に比較して増加する症例が多く認められたが,3mmのスプリントを装着した場合,反対側の荷重が増加する症例が多く,傾向が異なった. 測定値の変動に関しては,両側小臼歯部にスプリントを装着した場合に変動が小さく,一方,小臼歯部に片側性にスプリントを装着した場合に変動が大きい傾向が認められ,特に3mmのスプリントにおいて顕著であった.このことから,小臼歯の咬合接触状態は身体の体重バランスに大きく影響する可能性があると思われた.
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