研究概要 |
1.CaF_2様沈着物の由来と耐酸性 前年度に、研磨後のエナメル質に10000ppmのNaFを作用すると、CaF_2様の沈着物が生じ、この沈着物はエナメル質の研磨後にフッ化物を作用したもの(F)と、レーザー照射後に作用したもの(LFL)とでは由来が異なる可能性が示唆された。そこで、この由来の違いがエナメル質の耐酸性にどの様な影響を与えるかについて、エレメントアナライザーを使用して実験を行った。耐酸性試験に使用した乳酸は0.1,0.01,0.001M濃度のものを使用した。その結果、0.1MではF試料において48時間後に、LFL試料では120時間後にフッ素の存在が検出不可能となった。以下、同順に0.01で24時間、72時間、0.001で48時間、96時間となった。このことは、FとLFLで出来る沈着物が同一のものでは無いことの一事象ではないかと考えられる。高濃度フッ化物によるエナメル質の耐酸性に関して、従来から牛歯エナメル質を研磨した試料を使用した報告が非常に多く、これらの報告のほとんどが研磨により生成されたエナメル質スメアー由来のCaF_2の耐酸性を計測していたこととなり、実際に口腔内で起きている現象とは異なった研究をしていた可能性がある。したがって、更に詳細な検討を行う必要性が生じてきた。 2.レーザー併用フッ化物の歯質耐酸性の試作光沢計による測定-フッ素濃度と配合物の違い- フッ化物はNaFを使用し、CMC,アルコール(Al)を配合させた1000,5000,10000ppmのフッ素溶液ならびにゲル状溶液を調製して使用した。CO_2レーザーの照射条件は1回目7WSPで20秒間照射、2回目3WCWにて20秒間照射で行った。耐酸性試験は0.01M乳酸で行い、測定は試作光沢計を用いて行った。その結果、レーザー照射、CMC配合10000ppmF、レーザー照射群が耐酸性獲得に優れていた。これは、ゲル状のCMC溶液によりフッ素イオンが高濃度に保たれているために、より多くのCaF_2が歯質表面に形成されたものと考えられた。今後、エナメル質耐酸性の向上をさらに目指し、フッ化物の種類について検討する。
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