研究概要 |
平成11年度において,マウス骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1)およびラット歯髄組織からアルカリ性ホスファターゼ(ALP)を精製した。平成12年度は,この精製ALPを用いて分子種について解析し,以下の結論を得た。 1.グリシン緩衝液を用いた非還元型ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)後のゲル内ALP活性を高感度に検出するため、あらかじめ、グリシン緩衝液の影響を活性染色で調べた。グリシンを用いた電気泳動を行うと、ゲル内ALP活性は、ホウ酸を用いた場合の半分に減少した。しかし、グリシンにZn^<2+>を事前添加すると、電気泳動後の酵素活性はZn^<2+>の濃度に依存して増加し、0.1mMで最大となり、ホウ酸緩衝液を用いた場合と同等かそれ以上になった。 2.MC3T3-E1細胞およびラット歯髄組織から抽出したALPをnative-PAGEあるいは非還元のSDS-PAGEにかけると、酵素はnative-PAGEのゲル中ではALP-N1とALP-N2に、SDS-PAGEのゲル中では130kと155kの2つに分かれた。ALP-N1とN2は、二次元電気泳動上で130と155kにそれぞれ一致した。粗抽出ALPを単に37℃で加温すると、ALP-N1(130k)はALP-N2(155k)に変化した。このALPの変化はALP結合性蛋白質によるのではなく、ALPの抽出分画中のグリコシルホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼD(GPI-PLD)によって特異的に生じることが明らかになった。 3.精製したALP-N1はN2と同一の等電点(4.3)と、ALP-N2抗体に対し同程度の結合親和性を有していた。これに対して、脂肪酸(C_<14>-C_<18>)はALP-N1中にのみガスクロマトグラフィで検出され、ALP-N2には脂肪酸は認められなかった。ALP-N1に結合したSDS量は、脂肪酸のないALP-N2に比べて有意に多かった。これらの結果は、SDS-PAGEの泳動ゲル中をALP-N1(130k)がALP-N2(155k)より速く移動することを示唆している。
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