研究概要 |
本年度は,骨関連タンパクと骨芽細胞との関係を解明することを目的として,ヒトオステオポンチン遺伝子をヒト骨芽細胞様細胞に遺伝子導入し,生体材料への接着に及ぼす影響を検索した. 骨芽細胞様細胞として,ヒト骨肉腫由来のSaos2を用いた.ヒトオステオポンチンcDNAのC末端にFLAG tagを付与し,レトロウイルスベクター(pBabe-puro)にサブクローニングした.パッケージング細胞に導入後,レトロウイルスを回収した.このレトロウイルスをSaos2に感染させ,感染成立48時間後から,puromycinを用いてselectionを行い,OP-FLAG発現Saos2株をクローニングした(Saos2-OP).pBabe-puroのみをmock infectionし,selectionしたSaos2-puroをコントロールとして用いた.接着試験は,ポリスチレン製のディッシュを用いて行い,ディッシュの内径に合わせてチタン板を調整した.血清中のタンパクの影響を避けるため,無血清培地を用いて,Saos2,Saos2-OPおよびSaos2-puroをそれぞれ1.5×10^5播種し,6,12および24時間培養後,接着した細胞数を計測した. PCRの結果,OP-FLAGはSaos2-Opのみに発現しているのが確認された.Western blottingにおいても,FLAG tagを含むオステオポンチンの産生が確認された.以上の結果から,レトロウイルスを用いて,オステオポンチン遺伝子をSaos2に導入し,exogenousなオステオポンチンを発現させることが可能であることが示された.Saos2,Saos2-puroおよびSaos2-OPの接着数は,ポリスチレン,チタンともに経時的に増加した.6時間では,3種の細胞間に接着数の差は認められなかったが,12および24時間後では,ポリスチレン,チタンともに,Saos2-OPの接着数は,Saos2の1.5倍であった.以上の結果より,オステオポンチンの遺伝子を導入することにより,in vitroにおけるSaos2の接着能は高まることが示された.
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