研究概要 |
【目的】顎関節症の症状として耳鳴、耳痛などの耳症状が認められる。しかし耳症状の性状、発現機序は不明である。本研究では顎関節症患者について耳科的検査を行い、耳症状を客観的に評価することを試みた。さらに関節円板の位置異常と耳症状、耳科的検査所見との関係を検索した。 【方法】調査対象は耳鳴を併有していた顎関節症患者25名(43.4±17.1歳)である。耳科的検査は東北大学医学部附属病院耳鼻咽喉科に依頼した。また耳鳴について日本オージオロジー学会耳鳴研究会が製作した耳鳴調査表により耳鳴スコアを記録した。円板転位の有無は顎関節MRIから診断した。 【結果】耳科的検査により25名中12名で異常所見を認めた。内訳は感音性難聴7名、聴力低下3名、前庭機能障害2名、耳管機能障害1名であった。耳症状の有症側と顎関節症症状の有症側は全例で一致した。前方転位が認められた患者群15名と認められなかった患者群10名とで耳鳴スコアを比較したところ、前方転位群では7.7±2.0、非転位群では5.4±1.7であり有意差が認められた(t-test,p<0.01)。すなわち円板転位群では耳鳴の程度が重篤であった。さらに円板転位群では15名中10名に耳科的検査の異常所見が認められ、非転位群と比べ有意に多いことが示された(Fisherの直接確率計算,p<0.05)。 【考察および結論】顎関節症に認められる耳鳴の程度、耳科的異常所見は顎関節の器質的異常と関連していることが示唆された。
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