周囲に歯周靭帯を有するインプラントを開発することを最終目的として、動物実験を行った。用いたインプラントの素材は骨伝導能を有するハイドロキシアパタイトとし、成犬の下顎小臼歯の根分岐部よりテーパーのついた円柱状のハイドロキシアパタイトインプラントを貫通させ、その一部を周囲の歯周組織に突出させ病理組織学的観察を行った。その結果、歯根外のインプラント表面には元来の歯根から連続する硬組織の形成がみられた。また、この硬組織の周囲の一部の領域には歯周靭帯に類似したコラーゲン線維の配列も確認された。 今回の実験に先立ち、成猿の歯を一旦抜歯した後同様のインプラントを根尖側より歯根に挿入し元の歯槽へ再植したところインプラントの表面、周囲に歯周靭帯様の組織を確認した標本について新生硬組織部分を透過電子顕微鏡にて観察した。その結果同部にはシャーピー線維の封入が認められ、このセメント質様の新生硬組織には咬合機能の負担能力が備わっていることがうかがえた。 今後、咬合機能下でインプラント表面の新生硬組織およびその周囲組織がいかに変化してゆくか経時的にさらに詳細に観察し、また元来顎骨であった領域に突出させたインプラント周囲組織におけるアポトーシスを観察することにより同領域の組織構築がいかになされるかをより詳細に検討する予定である。
|